肌の土台に働きかける、FAS独自成分「BBエクストラクト」
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肌の土台に働きかける、FAS独自成分「BBエクストラクト」

研究・調査2025.10.17
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肌の土台に働きかける、FAS独自成分「BBエクストラクト*¹」

今回、私たちは京都丹波産の黒豆を原料とした「BBエクストラクト」開発しました。
このエクストラクトは黒大豆タンパク質を加水分解によりペプチド化した黒豆ペプチドを多く含有しているFAS独自成分です。
そして、我々が行っている肌の土台研究においてこの「BBエクストラクト」が肌の土台である「コラーゲン」「エラスチン」の産生や架橋へ関与している可能性があること、メラニンの生成を促すチロシナーゼの活性抑制作用があること、そして、有効成分ナイアシンアミドの効果を促進する可能性があることを発見しました。

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1.BBエクストラクトの高いコラーゲン産生作用

黒大豆に含まれる大豆イソフラボンは女性ホルモン(エストロゲン)と化学構造が似ていることから植物性エストロゲンとも呼ばれています。そのため、エストロゲン受容体の一部に結合し、ヒト真皮線維芽細胞におけるコラーゲンやヒアルロン酸の産生を有意に促進することが知られています。*²

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今回、BBエクストラクトを添加した際のコラーゲン産生量を調べるため、BBエクストラクトを線維芽細胞に添加しコラーゲン量を測定しました。

その結果、コントロールに比べ約34%アップと、高いコラーゲン産生が認められました。

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既にある知見からは皮膚線維芽細胞では、エストロゲン受容体の活性化が コラーゲン産生促進に寄与することが報告されています。*³

その為、今回得られた結果は、BBエクストラクトに含まれる構造上エストロゲンと似ている大豆イソフラボンがエストロゲン受容体に関与し、コラーゲン産生をサポートしてくれている可能性があると考えられます。

さらに黒大豆には高い抗酸化作用を持ち、活性酸素を除去する働きがあるアントシアニンが豊富に含まれています。

一般的に、肌において、活性酸素とは、皮膚細胞内で発生する酸化ストレスの原因物質であり肌の老化やトラブルの引き金とも言われています。*⁴

加えて、この活性酸素はエストロゲンやイソフラボンの受容体でもあるエストロゲン受容体へ間接的に働きかけ作用を阻害する可能性があることもいくつかの論文において示唆されています。*⁵,*⁶

イソフラボンは構造上エストロゲンと似た作用を持ちながらも抗酸化作用があること、そして黒大豆に豊富に含まれているアントシアニンが活性酸素の除去を行ってくれることにより、イソフラボンがエストロゲン受容体に結合しコラーゲンの産生に寄与している可能性もあるのではと考えています。

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肌の土台とも言える、コラーゲンとエラスチン

コラーゲンとエラスチンは肌の真皮層に存在し、どちらも肌の弾力に関わる非常に重要なタンパク質ですが、それぞれの役割や特性には大きな違いがあります。

コラーゲンは皮膚の強度や弾力を保つために重要な構成要素です。真皮に多く存在し、コラーゲンを介して細胞同士をしっかりと結びつける働きを持っています。これにより、肌がしっかりと引き締まり、しわやたるみを防ぐ役割を果たします。コラーゲンは、特に加齢とともに減少するため、外部からなど何らかの形で補充が求められることが多いです。

一方、エラスチンは肌の柔軟性や弾力性を維持するために重要な役割を果たしています。エラスチンは、肌が引っ張られた際に元の形に戻る能力を担っており、この特性が肌の伸縮性を支えています。

このようにそれぞれ役割や特性の違うコラーゲンとエラスチンですが、実際は互いに関連し合うことで肌の土台作りを行っています。

エラスチンがコラーゲンを束ねることで、皮膚全体の安定性が保たれ、大きな構造体となることにより強固な架橋状態ができるのです。

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コラーゲンとエラスチンの架橋に重要な酵素『LOX』

このコラーゲンとエラスチンの架橋のカギを握っているのが「LOX(リシルオキシダーゼ)」という酵素です。

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LOXはコラーゲン同士、エラスチン同士の架橋を行い、コラーゲンとエラスチンの架橋構造をより強固にする働きがあります。*⁷,*⁸,*⁹。

これにより、肌の土台をより強固にすることができるのです。

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BBエクストラクトのLOX遺伝子発現量の亢進作用

今回、線維芽細胞にBBエクストラクトを添加し、LOXの遺伝子発現量を測定しました。

結果、BBエクストラクトを添加した際はコントロールに比べLOXの発現量が約24%アップしている事が確認できました。

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これにより、BBエクストラクトはエラスチンやコラーゲンの架橋を促進し、肌の土台をより強固に働きかける可能性があることが示唆されました。

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BBエクストラクトの抗酸化作用

黒大豆には抗酸化作用で知られているアントシアニンが多く含まれていることから、抗酸化作用を測る指標の一つであるDPPHラジカルの残存率を確認しました。

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結果から、BBエクストラクトの配合濃度依存的にDPPHラジカルの残存率が低くなっていく、つまり抗酸化作用が高まっていることが分かりました。

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BBエクストラクトの抗糖化作用

さらに、黄ぐすみなどに関与すると言われている糖化に関する試験を実施しました。

糖化は糖とタンパク質が結合しできるAGEs(Advanced Glycation End Products)いわゆる最終糖化産物が蓄積していくことで起こる現象で、黄色化や茶色化するため肌においては一般的に黄くすみとしても知られています。

このAGEsは蛍光にて計測できるため、抗糖化作用を測定する指標として使用されています。

今回、我々は糖とタンパク質の混合液にBBエクストラクトを添加したあと、蛍光強度を測定しました。

結果、BBエクストラクト添加群はコントロールと約15%の差があることが確認できました。

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この結果からは、BBエクストラクトが糖化による黄色化を抑えていることが分かりました。

BBエクストラクトのチロシナーゼ活性抑制作用

アントシアニンはその抗酸化効果によって紫外線による表皮細胞内の活性酸素を抑制し、炎症性サイトカイン等を抑えることでメラノサイトのチロシナーゼ活性を抑えることが複数の論文から報告されています。

そのため、私たちはBBエクストラクトを2種類の細胞を用いた試験に添加しチロシナーゼ活性に与える影響を調べることとしました。

培養したヒト表皮細胞に紫外線を照射し、培養上清をメラノサイトに添加した際のチロシナーゼ活性を検出した結果、BBエクストラクトを表皮細胞に添加した試験ではチロシナーゼ活性が約16%抑えられていることが分かりました。

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ナイアシンアミドとの相互作用

今回、私たちのBBエクストラクトの機能を調べた研究からはコラーゲン産生作用と間接的なチロシナーゼ活性抑制作用が認められました。

これらの主な作用機序としては、線維芽細胞にアプローチしてコラーゲン産生を高める働き、そして表皮細胞の酸化ストレスを抑制することによって炎症性サイトカインを抑えることにより、メラノサイト内のチロシナーゼの活性を阻害してメラノサイトのメラニン生成を抑える働きなどがあり、結果からはシワや美白などへの関連性が示唆されました。

そのため、我々はそれらの効果を持つ医薬部外品の有効成分としても知られるナイアシンアミドとの比較実験を兼ね、相互作用を起こすのか実験を行いました。

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結果、以下①②の二つのことが確認できました。

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①コラーゲン産生作用サポート

線維芽細胞にナイアシンアミドとBBエクストラクトを両方添加した群ではコントロール、ナイアシンアミド単体に比べコラーゲンの産生量が多くなっていることが分かりました。

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②チロシナーゼ活性阻害サポート

培養したヒト表皮細胞に紫外線を照射し、培養上清をメラノサイトに添加した際のチロシナーゼ活性を測定した試験においては、ナイアシンアミドとBBエクストラクトを両方添加した群で、ナイアシンアミド単体よりもチロシナーゼ活性阻害作用が高まることが確認できました。

これら二つの結果から、BBエクストラクトは有効成分ナイアシンアミドとの相互作用によりナイアシンアミドの効果がより発揮できる可能性が得られました。

今回のBBエクストラクトを用いた研究からはコラーゲン産生作用、真皮層の架橋構造の強化、チロシナーゼ活性抑制作用、抗酸化、抗糖化などの作用が確認できました。

これらは肌の老化に関わる重要な要因です。

FASリサーチセンターでは今後も引き続き、素材と発酵、そしてそれに関連する酵母の特性や技術などを最大限生かせるように研究を行い、肌の老化へ効率的にアプローチできるような製品の開発を続けて参ります。

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参考文献

*¹. Black Bean Extract
*².“Soy isoflavones enhance collagen and hyaluronic acid production in human dermal fibroblasts in vitro.”Ishimi Y. et al., (2001)
*³.”ヒト皮膚線維芽細胞におけるエストロゲン関連受容体αの機能解析” 七島直樹 青森県立保健大学 健康科学部 栄養学科
*⁴.”Role of antioxidants in skin aging and the molecular mechanism of ROS: A comprehensive review” Aspects of Molecular Medicine Volume 5, June 2025, 100063
*⁵. “Reactive oxygen species: Destroyers or messengers?” Grzegorz Bartosz Biochemical Pharmacology Volume 77, Issue 8, 15 April 2009, Pages 1303-1315
*⁶. “Evaluation Study on Novel Physiological Activities of Soy Isoflavones” Ryuichiro SATO Graduate School of Agricultural and Life Sciences, The University of Tokyo, Tokyo 113-8657
*⁷. ”Glycobiology and Extracellular Matrices Lysyl Oxidase Activity Is Required for Ordered Collagen Fibrillogenesis by Tendon Cells” Journal of Biological Chemistry, Volume 290, Issue 26, 26 June 2015, Pages 16440–16450
*⁸.”A highly potent bi-thiazole inhibitor of LOX rewires collagen architecture and enhances chemoresponse in triple-negative breast cancer” Cell Reports, Volume 31, Issue 11, Pages 1926–1941.e11
*⁹.”Lysyl Oxidase Enhances the Deposition of Tropoelastin through the Catalysis of Tropoelastin Molecules on the Cell Surface”Hiroshi Kaganami, Masahiro Nishimura, et al. Biological & Pharmaceutical Bulletin 2017 Volume 40, Issue 11, Pages 1837–1844

※グラフのデータなどは全て自社調べによる。

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