私たちは、皮膚科学の観点から「透明感」の定義を再構築し続けています。
肌の美しさを決定づける要素、それは物理的な「光」の拡散と、生理学的な「色」の均一性である、と私たちは考えています。
本稿では、FSRC(Fermentation & Science Research Center)が着目した新たなブライトニングメカニズムと、その有効性を裏付ける臨床試験結果について報告します。
1. 内部反射光の最大化 - 「ケラトヒアリン顆粒」
透明感を科学的に解釈すると、それは「肌内部に入射した光が、いかに効率よく散乱・反射して外部へ戻るか(内部反射光の量)」に帰結します(1)。
これまで私たちは、独自に開発したBRファーメントが肌の様々な部位に働きかける可能性を示唆し、その結果として、BRファーメントを含む化粧水を連用することで、肌の内部反射光が増え透明感が向上する、という結果を示しました(2)。今回着目したのは、顆粒層に存在するケラトヒアリン顆粒の光学特性です。
顆粒層の光散乱因子
ケラトヒアリン顆粒は、フィラグリンの前駆体タンパク質であり、光の散乱に寄与する可能性があることが知られています(3)。 この粒子が顆粒層に十分に存在することで、角質の水分量が増え、かつ入射光は細胞内で散乱を起こし、肌の内側から発光するような、十分な「戻り光量」を生み出すのではないか、と私たちは考えました。
GTエクストラクトによるケラトヒアリン顆粒へのアプローチ
加齢に伴う表皮ターンオーバーの遅延は、ケラトヒアリン顆粒の減少を招くと考えられています。そこで私たちは、様々な原料をスクリーニングし、屋久島で栽培された茶葉から抽出したGTエクストラクトに、ケラトヒアリン顆粒を増加させる可能性を見出しました。
この成分は、元々表皮細胞の分化を促進する効果があることがわかっていました。そこで、実験をさらに進めたところ、ケラトヒアリン顆粒の形成促進作用があることが示唆されました。
下の写真は表皮細胞にGTエクストラクトを添加した実験の結果になります。赤い粒状のものがケラトヒアリン顆粒を示していますが、GTエクストラクトを添加したものはコントロールと比較して、ケラトヒアリン顆粒の生成が増加していることが分かりました。
2. メラニン代謝サイクルの正常化 -「滞留メラニン」
光へのアプローチと対をなすのが、色味へのアプローチです。FASでは肌色を構成する4色(赤・黄・茶・青)のバランスを取ることが、透明感のある肌に重要であると考えています。
透明感を阻害する一因
健常な肌であればターンオーバーと共に排出されるメラニン色素が、加齢により排出遅延を起こし、表皮下層に滞留する現象、我々はこの状態を「滞留メラニン」と呼んでいます。 この滞留したメラニンは、入射光を過剰に吸収(吸光)してしまい、内部反射光を減衰させる「濁り」の要因となる可能性があります(4)。
LFエクストラクトとメラニン分解
この「滞留メラニン」に対する成分として選定されたのが、LFエクストラクトです。
雪解け水の豊富なミネラルを含む土壌で大切に育てられた、「誠蓮(まことはす)」という品種の蓮の花から抽出されたこの成分には、高い抗酸化作用に加え、細胞内の不要物質の分解を促す作用があることが示唆されています。
今回、表皮細胞にLFエクストラクトを添加し、メラニンの量を測定しました。
その結果、LFエクストラクトを添加した場合は、コントロールに比べ、メラニンの量が有意に低下していることがわかりました。
3. 臨床試験結果 8週間連用塗布
今回私たちはGTエクストラクト及びLFエクストラクトを含む美容液を8週間連用塗布した臨床試験を実施しました。
試験は43歳〜60歳の女性22人を対象に行われ、1日朝晩2回、パール粒大の量を8週間の塗布を行ってもらいました。
肌の透明感に対する効果
8週間の連用試験において、肌の透明感を測定したところ、試験開始時より5.3%向上することが確認されました。これは、肌内部の光の反射効率が改善されたことを示唆しています。
色素沈着に対する効果
肌の透明感を阻害する要因の一つに色素沈着があることは広く知られています。今回の臨床試験において、色素沈着の状態を測定したところ、17.3%という高い改善効果が確認されました。
私たちが提案するのは、単純な肌の「白さ」ではなく、内側から光輝くような「透明感」です。 今回、GTエクストラクトとLFエクストラクトという2つの成分が、肌の透明感に寄与する可能性を示しました。今後もFSRCでは、科学的視点に基づいた製品開発を行うため、日々研究に取り組んで参りたいと思います。
参考文献
(1)桑原 智裕: ”肌の透明感測定”, 光学, 39 (11), 524-528, 2010.
(2)FSRC, ”全層に届ける発酵の力〜FAS初の独自成分「BRファーメント」〜”, https://fsrc.jp/research-center/4
(3)M Weinigel et al: Impact of refractive index mismatches on coherent anti-Stokes Raman scattering and multiphoton autofluorescence tomography of human skin in vivo, Phys. Med. Biol. 60(17), 6881-6899, 2015.
(4)舛田 勇二, 國澤 直美, 高橋 元次: ”肌の透明感測定とその対応化粧品の有用性評価”,日本化粧品技術者会誌, 39 (3), 201-208, 2005.