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肌の中の小さな発電所、ミトコンドリア。―損傷ミトコンドリア一掃ケアという、エイジングへの新たな視点―
009.
肌の中の小さな発電所、ミトコンドリア。―損傷ミトコンドリア一掃ケアという、エイジングへの新たな視点―
コラム
2026.06.18
009.
肌の中の小さな発電所、ミトコンドリア。―損傷ミトコンドリア一掃ケアという、エイジングへの新たな視点―
コラム
2026.06.18
私たちは、紫黒米酵母代謝液を核とした発酵エイジングケアの研究を積み重ね、肌の透明感や成分の浸透促進に関する新たな知見を発信してきました(*1)(*2)。今回は、その延長線上にある次なるテーマ―「細胞の中で何が起きているのか」という、より深いレイヤーへの探索をご紹介します。注目したのは、すべての細胞に存在する小さな器官「ミトコンドリア」と、そこから始まるエイジングのメカニズムです。
(1)
1. 皮膚の細胞とミトコンドリア
人間の体は数多くの細胞で構成されていることが知られています。細胞は主に細胞膜、細胞質、核の3つに分けられ、細胞質の中にはミトコンドリア、小胞体、リソソームなどの細胞小器官があり、そのそれぞれが独自の役割をもっています。
皮膚においてもそれは同様です。皮膚は表皮と真皮の二層構造をしており、表皮は角質層、顆粒層、有棘層、基底層の4層から成り立っていますが、それらもすべて細胞から構成されています。そして、紫外線や大気汚染、摩擦などによる外的な刺激から身を守るバリア機能としての働きも担っています。
肌が日々受けるダメージへの応答も、肌のターンオーバーやコラーゲンの産生も、すべては細胞一つひとつの活動によって支えられています。そして、その細胞の活動を支えているのが、細胞内に存在する「ミトコンドリア」なのです。
(2)
2. ミトコンドリアとは
細胞質中に存在し、生命活動の維持という重要な役割を担っているのがミトコンドリアです。
ミトコンドリアの主な働きとしては、古くなった細胞の死をコントロール(アポトーシス)したり、細胞を健全な状態に保ったりと、様々な役割があげられます。中でも最も重要な役割が「エネルギー産生」です(*3)。
ミトコンドリアは、食べ物から摂取した栄養素と、体内に取り込まれた酸素の大部分を使用し、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるエネルギー分子を産生します。私たちはこのATPをエネルギー源として生命活動を維持しているため、ミトコンドリアは一般的に「細胞の発電所」「エネルギー産生の司令塔」とも呼ばれています。
肌においても例外ではありません。表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)、真皮線維芽細胞によるコラーゲンの産生、紫外線ダメージからの修復―こうした肌のすこやかさを支えるあらゆる活動は、ミトコンドリアが生み出すATPによって駆動されているのです。
(3)
3. マイトファジーとは
マイトファジーとは、老化や損傷により機能不全に陥ったミトコンドリアを、細胞が選択的に分解・排除するシステムのことを指します。
オートファジーは、2016年に大隅良典博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したテーマとして広く知られている、細胞のリサイクル機能を解明した重要な研究領域です(*4)。マイトファジーは、そのオートファジーの一種にあたります。
オートファジーは長年、細胞質成分を「非選択的」に分解する現象として研究されてきました。しかし近年では、特定の標的をそれぞれ「選択的」に分解できることが明らかになってきています。これらは選択的オートファジーと呼ばれ、中でもミトコンドリアを標的とするものがマイトファジーです(*5)。
いわば、細胞内における「品質管理システム」。役目を終えたミトコンドリアや、ダメージを受けて機能が低下したミトコンドリアを的確に見分け、選別し、分解する。この働きによって、細胞内のミトコンドリアは常に健全な状態に保たれているのです。
(4)
4. ミトコンドリアとエイジングの関係
ミトコンドリアは体内に取り込まれた酸素の大部分を使用し、私たちが生きるために必要なエネルギーを生み出しています。私たちが酸素を必要としている理由はミトコンドリアにあると言っても過言ではありません。
一方でこのエネルギー産生の過程で、ミトコンドリアで利用された酸素のうちの一部が活性酸素(ROS)に変換されると推定されています。
活性酸素は、過剰に発生すると細胞や組織を酸化的に傷つけ、結果として老化を加速させることが科学的に示唆されています。そのため、ミトコンドリアは老化と深く関わる細胞小器官であると考えられています(*6)。
皮膚において、紫外線などにより損傷を受けたミトコンドリアはミトコンドリア機能障害を引き起こします。すると活性酸素が増え、エネルギー産生が低下することにより、肌の老化が加速すると考えられています(*7)。
(5)
5. 損傷ミトコンドリア一掃ケア
そのため、紫外線などにより損傷を受けたミトコンドリアをすぐに取り除くことが、肌のエイジングに対抗する手段として重要となります。そして、まさにその役割を担っているのが、先ほどご紹介したマイトファジーです。
細胞老化とミトコンドリア機能障害は密接に結びついており、相互に影響し合うことが報告されています。とりわけ、老化した細胞ではマイトファジーの活性が低下し、その結果として損傷したミトコンドリアが蓄積することが知られています(*8)。これは、損傷したミトコンドリアを除去するマイトファジーが、健やかな細胞状態を維持するうえで重要な役割を果たしていることを示しています。
FASの研究所では、このマイトファジーにアプローチする独自成分の特定を進めています。健全化されたマイトファジーにより、損傷したミトコンドリアが速やかに除去されるシステムを、私たちは「
損傷ミトコンドリア一掃ケア
」と名付けました。
今後は、肌の老化にアプローチしていく観点において、ミトコンドリアやマイトファジーに関する研究をさらに進め、細胞のレベルから老化に働きかける製品開発に役立てていきたいと考えています。
(6)
参考文献
*1 FASリサーチセンター「全層に届ける発酵の力〜FAS初の独自成分「紫黒米酵母代謝液」〜」 https://fsrc.jp/research-center/4
*2 FASリサーチセンター「紫黒米酵母代謝液が持つ、もうひとつの力。―有効成分の浸透を高める「ブースター効果」の発見―」 https://fsrc.jp/research-center/7
*3 Spinelli JB. & Haigis MC. "The multifaceted contributions of mitochondria to cellular metabolism."
Nature Cell Biology
, 2018.
*4 The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2016 – Yoshinori Ohsumi. NobelPrize.org. https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/2016/ohsumi/facts/
*5 Pickles S. et al. "Mitophagy and Quality Control Mechanisms in Mitochondrial Maintenance."
Current Biology
, 2018.
*6 López-Otín C. et al. "The Hallmarks of Aging."
Cell
, 2013.
*7 Yuan X, et al. "Role of Mitochondrial Dysfunction in UV-Induced Photoaging and Skin Cancers."
Experimental Dermatology
, 2025.
*8 Miwa S, et al. "Mitochondrial dysfunction in cell senescence and aging."
Journal of Clinical Investigation
, 2022.
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